- 仕事の帰りにミント神戸でマット・リーヴスの『ザ・バットマン』を見る。これはかなり好き。ずっと雨が降りしきる陰鬱なゴシックのゴッサム・シティの地下に溜まった濁った汚水は、やがて憤怒の洪水となって噴き出す。1995年のデイヴィッド・フィンチャーの『セブン』が参照されているのは言うまでもないが、からからに乾いた青空の下で最後の破局が訪れるというような、突き抜けるような狂気は『ザ・バットマン』にはない。そんなカタルシスは訪れず、臭い泥土が残されるだけであることを、1995年以降の私たちは思い知らされているからだろうか(この認識がなければフィンチャーは『ゾディアック』も『ドラゴン・タトゥーの女』も『ゴーン・ガール』も撮らなかっただろうし、『マインドハンター』をあのままで終わりにはできなかっただろう)。星条旗をふと思わせる赤と青の輝きは、泥まみれのヒーロースーツの男が松明を掲げて進む水面の上に、わずかに揺らめくだけである。グリーグ・フレイザーの撮影は、とてもすばらしい。ニルヴァーナはもちろんマイケル・ジアッキーノの音楽も好み。