• 阪神電車で福島まで出て大阪中之島美術館の「モネ 連作の情景」展を見る。浜に上がっている三艘の漁船やノルマンディーの断崖や夕暮れのウォータールー橋など、そういうタイトルが絵の脇についているが、私が好きなのはこれらの表面の絵の具の粒立ちや筆致や筆痕なのである。とは言え、たとえば《ヴェルノンの眺め》と題された絵の前に立って、じっと画面を見ていると、グレーと茶の混ざった筆が作ったひょろ長いハッシュタグのようなものが、いきなり頭の中に、確かな質感と、それがそこに紛れもなく在るという空間を伴って、草原の中にぎくしゃくと見える木製の柵として立ち上がる瞬間がある。それがとても面白い。