きょう買った古書

  • ラース・フォン・トリアー、スティーグ・ビョークマン『ラース・フォン・トリアー』(訳・オスターグレン晴子。水声社
    • 原題は『トリアー、フォン・トリアーを語る』。
    • 600円だったので、迷わず購入。
    • 去年だったか一昨年だったか、扇町の交差点の近くに一軒、古本屋が店を開いた。今年になって、その古本屋は店を閉めた。私も、其処で本を買ったことは一度か二度ぐらいだったと思う。廃業したのか、何処かに店を移したのか、それも判らない。
    • 地下鉄の中で、買ってきたこの本----カバーは帯もくるみ込んで、ビニール紙が掛けてある----を眺めていたら、カバーの後ろの袖の上隅に、たぶん値段紙が貼ってあったのを剥がした跡が、少しだけ残っていたのに気づいた。本をパラパラとやっていると、ツンとヤニの匂いがする。煙草を吸わないので、この匂いには敏感になってしまうのだ。
    • そのとき、あの閉めてしまった古本屋のことを思い出した。これは、あそこにあった『ラース・フォン・トリアー』ではないかと思った。あの店の主人は、いつ行っても、ひっきりなしに煙草を呑んでいた。そして、私が行くときは大抵、桂ざこばが出ている午後のラジオが掛かっていた。訪れては、この本は必ずパラパラとやっていたが、さっさと買ってしまうには、私には少し値段が高くて、結局買わなかったのだった。
    • それなら、店先で一冊200円だった『芸術新潮』の束も----私はそのなかから、草森紳一が独りで丸ごと執筆している大特集「ファッション写真の大冒険」の1994年8月号と、ムンクの愛した女の写真と、満谷国四郎の絵「軍人の妻」が載っている1992年6月号を買った----煙草の匂いがしたので、もしかするとあの店にあったものではなかったか? 
    • 海の下の鮪の群れみたいに、ぐるぐると本も回っている。