カエルのうたがきこえてくるよ

  • 朝起きると、「しま」は、柚子の部屋の椅子の上で丸くなって眠っていた。
  • ホルスト・シュタインの振るヴェルディドン・カルロ》をかけながら、ぽちぽちとPCのキィを叩く。外は突き抜けるような晴天。
  • ギーレンの振るストラヴィンスキーの《アゴン》をかけながら、『アイアムアヒーロー』の三巻を読む。
  • アルバイトの始まる時間より少し早く家を出て、自転車を飛ばして、隣町の図書館に。図書館のハシゴをして、十年ほど前の文藝誌のコピーを取る。
  • 仕事を終えてから、閉店前の本屋を半時間ほどぶらぶら。
  • 自転車で家へ帰る途中、小さな田圃の脇を通るのだが、つい先日まで、草刈りをし終え、草の汁が大気に瀰漫して、むわっとしたきつい匂いを放っていた空っぽの土地に、水が入れられていた。灰汁のような水の広がりが、月明かりに照り映えている。濁って見通しのきかない水のそこここに潜んでいるらしい、夥しい数のカエルどもの鳴き声が、複層して響き渡っていた。
  • 帰宅して、柚子と晩御飯を食べる。ふたりでうたた寝。「しま」に起される。
  • それから部屋で独り、コロリオフの弾く《インヴェンションとシンフォニア》をずっと聴いている。