虎ではなく猫。

  • 明け方、柚子の額を掌で触れると、熱は引いている。私はそのまま眠る。
  • 盆踊りのときに流れている「なんとか節」みたいなのが夢のなかで聴こえている。ぺたっとしたモノラル録音で、女のひとの歌声と節まわしも、ふわふわとしていて心地よい。目が醒めると、それは、窓を開けた隣家から実際に聞えてくるのだった。正午少し前。慌てて外へ出るが、ゴミ収集は当然、何処の場所も終っている。
  • ごはんを食べて、風呂に入り、洗濯機を廻して、洗濯物をベランダに干してから、電車に乗って実家の近くの散髪屋へ。しかし、髪を切って実家に寄ってアルバイトに行くために必要な、ぎりぎりの時間で動いてしまったので、最初の散髪屋さんにお客さんがいたことで、いきなり予定が狂う。散髪は諦めて、実家に。
  • 祖母と母と少し話をする。大抵、父のことである。留守の弟から『アイアムアヒーロー』の三巻と、DVDを二枚借りて、母からコカコーラのペットボトルを一本と、祖母からチーズおかきの袋を貰い、そのままアルバイトに。
  • 久しぶりに中島敦の「山月記」を読んだが、やっぱりこれを読むのはつらい(『アラザレ』で皆でこの小説の短評を書いたが、あれは大変よかった)。
  • 松平頼則の最晩年の大作《ピアノ協奏曲第三番》がようやく初演される! 嬉しい!
  • 駅でたまたま柚子と一緒になり、ふたりで帰宅する。晩御飯を食べて、お茶を呑みながら、TVをつけていると、NHKで人形劇『新・三銃士』の再放送をやっている。それを「しま」が、じっと見ている。TVの真ん前に陣取って、真剣に画面を見つめている「しま」を、柚子と見ながら、笑う。「しま」は宝塚とか女子フィギュアとか、そういうのを見るのが好き*1
  • 夜中に、Skypeで『アラザル』の出張企画のためのミーティング。久しぶりに柄谷行人の「隠喩としての建築」を思い出した。
  • 外が明るくなってくるまで喧喧諤諤やっていたのだが、やがて眠ってしまう……。
  • ふと、『ユキとニナ』という映画のことを思いだして書くのだけれど、ユキという名前を、いろんなひとたちがさまざまな声と抑揚で呼ぶ。おなじ「ユキ」と云う言葉の発声なのだが、それはあらゆる場所で、まったく別々のものなのである。それらの音の感触こそが、映画をみてからずいぶん経つ(しかし半年は経っていないはず)今、視覚的な想起にまさって、耳の奥で甦る。

*1:http://twitter.com/toyozakishatyou/status/15335801756/ 猫に訴える何かがあったのか?