浮かずは「○」、浮けずは「×」

  • 朝起きると、炊飯器にごはんが炊いてある。柚子が会社に行く前にしかけておいてくれたのだ。大変ありがたいことであると感じて、泣きそうになる。
  • 昨晩MR君が送ってくれていたメール、独語と仏語の学習のための手引きを読む。彼自身が実際にやってみて、それで手ごたえを得ることができたやり方のまとめである。ひたぶるの積み重ねで、MR君自身が、まさに「漆塗りのように」と形容しているとおり。とにかく感心する。他人事としての感興ではなくて、頭を五、六回ばかんぼかんと殴られたような気分になる。勉強しなきゃ、とつくづく感じる。(感じたのなら、すぐにやればいいのだが、この日、私が今じぶんがやるべき古典文法の勉強を再開したのは、ようやくアルバイトから帰ってきて、柚子と一緒に晩飯を食い、午前零時を過ぎてから、なのである。しかし、怠惰でやらないままにしたのではなく、一応やったのだから、MR君のパンチはちゃんと脳天に響いていた!)
  • 風呂に入り、洗濯物を干して、遅い昼飯を食べる。少し雨が降り、郵便を出し、夕方からアルバイト。自転車をひっぱりだすとき、庭に目をやったが、明らかにきれいになっているのがよく判って、少し驚き(柚子もけさ、同様だったそうである)、庭の手入れもこれからは少しずつやらなきゃいけないなと思う。
  • アルバイトから帰ってからのあらましは、先述のとおり。ごはんを食べる前に、客間に置いていた段ボールの山(私が部屋にぐずぐずと溜め込んでいたのを、先日、柚子が畳んで纏めておいてくれた)を、柚子に手伝ってもらって(「しま」を抱っこしておく、など)外の物置にしまう。
  • 客間の机で勉強を始めてから(私の部屋の机は参考書とノートを広げるスペースが全くない)、一時間半ほどして、うたた寝。起きると午前四時。いつの間にか「しま」がやってきていて、何とかして、閉めてある押入れを開けようと奮闘しているごりごりばりばりという物音で起された。観音開きの客間の押入れの扉は、「しま」が開けることができないように、取っ手を紐で結んである。私がやった。「しま」は、この家のなかで、彼女が自由に入ることができない場所というのを、なくそうとしている。折角だから少しだけ進めて、疑問が出て、躓いた箇所を、辞書で調べて得心してから、きょうの分は終わりにする。
  • すっかり明るくなってきて、名前の判らない鳥が屋根の家でぐじゅぐじゅ鳴き始めたのを聴きながら、眠る。耳をすませていると、やがて、雀だと云うのがはっきり判る鳴き方に変わっていったのが、ちょっと面白かった。
  • 隣家が雨戸を開ける音のあと、柚子が目覚めて、あくびをした。