• カウンターに坐っていると、やってくるひとは結構むすっとした顔をしている。しかし、殆どの場合は「こんにちは」とかこちらから声を掛けると、その表情は緩む。無論その程度はさまざまだが。私も含めて、普段は気づくことなく不機嫌そうな顔をしているひとの多さを思う。実際に不機嫌なのだったらまるで構わないのだが。
  • しっかりとした建物のなかで、厚い窓ガラスの向こうで木が盛大な風にしなっているのを仕事の合間に眺めている。あまり大っぴらに云うことはできないが、台風の只中にいるとき、ぬくぬくとしたところでその推移を感じていると、知らずに昂揚してくる。
  • 職場を出るとすっかり台風は過ぎ去ったあと。駅前まで銀杏並木になっている舗道が、落ちた葉っぱやら青いままの実やら小枝、剥ぎ取られた樹皮などで埋め尽くされている。
  • そのままぶらぶらと元町まで古本屋を数軒を漁って(もうすっかり古本の値段は下落してしまった、倉庫代がいちばん大変だ、じきにこういう店舗型の古本屋は自然消滅ですよ、と、店主が客に自嘲しながら語っているのに出くわす)、隣町で苺のショートケーキをふたつ買って帰宅する。柚子はひとつを少しだけ食べて、残りは私がすっかり食べてしまう。
  • 映画をみてから寝ようと思うが、やはり、とろとろと眠る。明日は休みだし、よしとする。