- 久生十蘭『地底獣国』(教養文庫版)
- シュテファン・ツヴァイク『バルザック』(早川書房)
- ジェルジ・ルカーチ『歴史と階級意識』(白水社版著作集第九巻)
- ゲオルグ・ジンメル『生の哲学』(白水社版著作集第九巻)
- 後二者は函なし。何れも大変満足な値段であった。
- そう云えば、二月号の『新潮』の浅田彰が凄い。柄谷行人らとジャック・デリダの追悼シンポジウム(「Re‐membering Jacques Derrida」)をやったものが掲載されているのであるが、その劈頭で浅田は、まるで超絶技巧のオペラのアリアを歌うかのように、デリダの生涯からその哲学までを、怖ろしく怜悧に、殆ど暴力的にまとめあげてみせるのだ。そのままカット&ペーストして、哲学辞典の「デリダ」の項に収めても、何ら違和がないだろう。無論、シンポジウムでの発言そのままではなく、加筆・修正が為されているのだろうが(と書きながら、たぶん会場でもこの部分は殆ど変わらなかったのではないかと思っているのだけれど。実際はどうだったのだろう)、何にせよその凄まじさは比類がなく、久しぶりに浅田彰の破壊的な力を見せつけられた。
- 村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』に、綿谷ノボルと云う剣呑なキャラクタが出てくる。私はそれを浅田彰の戯画だと思って読んだものだが、いやはや、浅田彰に比べれば綿谷ノボルなんて、何てことはないな。野田努が嘗て『噂の眞相』で書いたように、浅田彰ほどのパンクスはちょっといない。