『突撃』以来の塹壕映画

  • 10時頃、起床。今日は柚子家の墓参りに出掛ける。よい天気である。墓地は明るい花でいっぱいだった。
  • 姑と別れ、私と柚子は映画に。『ローレライ』の口直しに、どうしても連休の間に何か観たかったのだ。ジャン=ピエール・ジュネ監督の『ロング・エンゲージメント*1を観る。第一次大戦の凄惨な塹壕戦で戦死したと伝えられた、灯台守の婚約者。彼の生存を信じる娘が、けったいな人物たちと共に彼を捜しまわる。如何にもジャン=ピエール・ジュネらしい、『アメリ』で顕著だったガラクタ感溢れる凝った映像は本作でも健在である。
  • しかし、この映画の最大の見どころは其処ではない。兎に角それは徹底的に再現された「塹壕」である。古いヨーロッパを徹底的に破壊し尽くした、第一次大戦の戦場である「塹壕」。この映画は、オープニングの、処刑される五人の兵士たちがうねうねと延びる塹壕の中を引き立てられてゆく(電話線を避けながら歩いて行くのが堪らない!)シーンに始まり、繰り返し繰り返し「塹壕」へと戻ってゆく。第一次大戦塹壕をこれほど丁寧に描いた映画は、やはり同じフランス軍を扱ったキューブリックの傑作『突撃』くらいではないか?
  • 消えた婚約者を探す娘は、気鬱になるとチューバをぶうぶうと吹く。灯台の海難信号の音に似ているからなのだが、それは寧ろ、第一次大戦で破壊されたヨーロッパを巨大な豪華客船の沈没になぞらえた諸作*2を想起させる。もういちど観たいと思わせられる映画だった。
  • いつもの喫茶店で休憩。それからジュンク堂に寄り、書籍を求める。

*1:ロング・エンゲージメント』公式サイト http://long-eng.warnerbros.jp/

*2:フェリーニの『そして船は行く』やタイタニック号の沈没に取材したエリック・フォスネス・ハンセンの小説『旅の終わりの音楽』を参照のこと。