中原昌也は現代最高の「正論」の人である

  • 通勤電車の中で『嫌オタク流』を読了。Amazonの書評ではボロクソに叩かれている本だが、オタク批判よりも射程は広くて、現代日本の文化状況全般への大いなる批判の書。特に、中原昌也の「真っ当さ」が恐ろしいほど光っている。その身も蓋もなさは、殆どセリーヌの政治パンフレット並み。以下、特に印象的だった言葉を登場順に抜く。

癒されないことの方が、いろいろなものを生み出すと思うけどね。

本当の歴史を知ったと思い込んだ瞬間に、みんなそこで思考停止するわけでしょう? そっちの方がよっぽど悪い思考停止ですよ。

中原 身のまわりを自分の好きなものだけで固めて、それで何とかなってしまう状況は耐えられないし、本当に嫌いですね。単なる感情論でしかないけど、それで世の中が面白くはならないもん。
高橋 今はひとつの映画なり小説なりの中に自分が好きじゃない要素が入ってくるだけで観客や読者に拒まれるから。
更科 作品を「教養」じゃなくて「ツール」として捉えてますね。「泣きたいときはこのアニメ」、「オナニーするときはこのゲーム」、みたいな。作品が総合薬ではなくてサプリメント化していると言いますか。
中原 その問題って、結局は今の世の中のダメな部分すべてに影響していて。たとえば『映画秘宝』編集部に届いた読者からの感想で一番笑ったのが、「自分の知っていること以外はつまらなかったです」という批判。

何も僕はマニュアルやカタログ自体が悪いとまでは言いませんけど、もう少し自分のアタマで考えたりとかすればいいのにねえ。でも、確かにそれは辛いことなんだよね。誰とも共有できない行為だから。

  • 中原昌也は、ものすごく判っていて、ものすごく良いことを云っていると、私には思えるのだが……。