兎に角、手許に置いておきさえすれば……

  • このところ非常に頻繁に、ショスタコーヴィチの『ムツェンスク郡のマクベス夫人』を聴いている。ロストロポーヴィチが振った爆発的な名演。高校生のときに国内盤(やたらと詳細な解説と歌詞の日本語全訳が付いている)を買ったじぶんを褒めてやりたい。
  • きみは、ショスタコーヴィチ島田雅彦のアジに乗って聴き始めたのでした。マーラーにどっぷりハマった後だったので、交響曲第14番「死者の歌」の不気味と滑稽が織り成す偉大さは理解できたけれど、オペラの方は理解が『ばらの騎士』どまりだった当時のきみには、正直『ムツェンスク郡のマクベス夫人』は、ドガジャガとうるさいオペラだと云うふうに感じただけで、その良さがぴんとこなかったでしょう。でも、御心配なく。十数年後に、きみはこの大変非道なオペラ(そう云えば、きみが大学に入って初めて読んだスラヴォイ・ジジェクも「とてつもなく不穏なスターリン的作品」と評していますよ)をめちゃめちゃ愉しんで聴いています。古典はやっぱり、取りあえず手元に置いて、いつでも聴いたり読んだりできる状態にしておくことが大切ですね。
  • リベスキンドの『ブレイキング・グラウンド』を読んでいると無性に、ベルリンのユダヤ博物館を実際に体験したくなる。そう云えば、2009年の10月にベルリン・ドイツ・オペラで大野和士が新演出の『影のない女』を振るらしい……。