『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』を観る。

  • きょうは寝坊で一時間半も遅刻。まったくよろしくない。
  • U君に整理券を取って貰い、シネリーブル神戸で『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』*1を観る。
  • オープニングを、「旧劇場版」のラストの「終末の浜辺」を思わせる、汀に打ち寄せる真赤な波から始めてみせたことに*2、今回の再構築にかける庵野秀明の本気を見た。TV版第1話「使徒、襲来」の冒頭で印象的だった、74式改が海に向けてずらりと砲列を並べ、崖ぞいの道から使徒を待ち受けるカットは今回も活かされていたが、その海の色も青から赤に変わっている。
  • ビル、夕焼け、廃墟、電車、電柱などで描かれる「風景映画」としての緻密さはさらに増し、語りもテンポ良く加速して、映画後半のメインとなるヤシマ作戦の前後でターミナルドグマに磔にされているリリス、そして渚カヲルの登場も済まされる。ミサト(今回はとても格好良い!)とリツコの会話を主とする、追加されたシーンも良い。庵野秀明の持ち味である、映像の繋ぎと、その動きの気持ち良さは云うまでもない。
  • しかし、TV版や、特に「旧劇場版」に突出していた圧倒的なエッジのビターやスウィートはなりをひそめ、ずいぶんマイルドな『ヱヴァ』になっている。
  • キネマ旬報』に掲載された鈴木敏夫へのインタヴューで、庵野が「とにかくこれをやらないことには次に行けないんです」と語ったと云うことが明らかにされていて、それはとても良く判るような気がするのだが、やはり私は、庵野秀明の完全な新作が観たかった。だが、本編終了後の予告篇を観るかぎり、次の『破』で、大いに異なる物語が展開するようで、ひたすら期待。
  • 使徒ラミエルの姿が、実に素晴らしくリメイクされていた。めちゃくちゃ格好良かった。それから、やはり私は鷺巣詩郎の劇伴に弱く、綾波レイに全ッ然萌えず、赤木リツコが堪らん*3。と云うのを再確認した。
  • ところで、私はこの映画を、制作者側の精神としてTV版や旧劇場版をなかったことにするのではなく、それらを活かしながら、しかし、あくまでまったくのゼロ地点から語り始めた映画だと思っていたのだが、映画館を出ると、U君が云う。
  • 曰く、これは、TV版や旧劇場版の語り直しやリメイクではなく、それらの直接の続編である。旧劇場版の「終末の浜辺」から開巻するのは、素直にその続篇であると云うことをダイレクトに示しており、総てがズレながら回帰するのではないか、と。つまり、輪廻である、と。おお、三島由紀夫の『豊饒の海』としての新旧『エヴァ』!? 何だかスカンと説得されてしまう。
  • U君と昼食を取り、あれこれと今後のことを駄弁る。お茶を飲み、私の水泳教室があるので、夕方、別れる。
  • 「水泳は力は要りません、タイミングです」と、先生が云う。肩にずいぶん力が入っているとのこと。じぶんでは抜いているつもりなのだが、抜けていないと云う。力で水を押さえつけて泳ごうとしているそうだ。頭で考え始めると、もう何が何やら判らなくなり、思わず、プールのなかほどで、泳ぎを止めて立ってしまう。頭を空っぽにしてみてください、と先生に云われる。
  • 私は身体運用に於いて、ものすごく、鈍い。例えて云うなら、私は頭で描いた動きを、身体にトレースさせようとするのだ。しかし、そうではなく、身体の自律こそが必要なのである。うーむむむむむ。これが、難しい。

*1:http://www.evangelion.co.jp/

*2:庵野秀明の『エヴァ』後の最初の仕事である実写映画『ラブ&ポップ』(特報 http://www.youtube.com/watch?v=x2BQT16M36c)も、真赤な水から始まる。私はこの映画をとても評価していて、此処から始まったであろう庵野秀明の10年が、しかし再び『ヱヴァ』を撮ることに回帰したのは、やはり何だか複雑である。重力を振り切ることができなかった、と云うような……。

*3:まだアスカ出てこないし。