おお、言葉。

  • 朝の六時、新宿に着くとネットカフェに入り、小さな薄暗い個室で、明日のためにストローブ=ユイレの『モーゼとアロン』を観たり、メールチェックをしたりする。ひとつひとつの画面の緊密さと、キャメラの移動の純朴すぎるほどの愚直な美しさに感心せざるを得ない。
  • 九時前にネットカフェを出て、簡単な食事を取り、高田馬場の早稲田通りに東京では神田と並ぶ古本屋街があると聞いてきたので、出掛ける。曇り空の下、四時間ほどぶらぶら。
  • 神保町のようなガッチリした感じではなく、ゆるく繋がっているふう。だが、なかなかよい店が多い。大いに気に入る。「古書現世」ではカウンターでキジトラの牝猫が眠っていたが、御店主に訊くと、もう二十歳だそうである。ミーセンセイと同い歳である。
  • 昼飯は、東京まできてわざわざ何でとじぶんでも思いながら「天下一品」でラーメンを食べる。こってりの並、辛子味噌をバカほど入れて。姑から電話があり、私も明日帰るからと少し話す。
  • きょうも表参道の「清水湯」に行き、風呂を浴びてから、佐々木敦氏の「批評家養成ギブス」へ。
  • 課題として書かれた生徒たちの音楽批評の講評。私のそれも鋭い突っ込みと、精緻な読みの両方を頂戴する。だが「途中から批評のドライヴが掛かってきていて」と云う言葉を賜ったのは嬉しい限り。他の生徒さんたちのテクストも書き手の色が極めてガッチリと出ていて、大いに刺激を受ける。読み手には、読み始めたテクストを最後まで読む義務はないが、書き手には、読み始められた限りは最後まで読ませてしまうテクストを書く義務がある。
  • 授業後の教室内呑み会は今夜はなく、男ばかり七人で近くの居酒屋で少し呑んであれやこれやと駄弁る。Y君のゴダールのベストは『新ドイツ零年』らしい。渋過ぎる。とても面白く時間が過ぎてゆき、気付いたら電車がなかったので、MR君が先日「そろそろバクハツ的にキますヨ」と云っていたチャットモンチーと云うバンドの真っ青なデカイ看板が貼り付いているのを「おお、これか」と横目で見ながら、ツタヤで雑誌を読んで時間を潰して、タクシーに乗り(運賃は2,000円強。ちなみに大阪-東京間は格安の夜行バスで3,500円である。たはは。)、父の家へ。台所で洗いものをしながら近況に就いて話をして、ぱったりと眠る。