- 近藤譲『音楽の種子』(朝日出版社)
- ガキの頃、柄谷行人の『探究I』を、少し哲学を学んでからハイデガーの『存在と時間』を読んだときと同様の、頭蓋骨の合わせ目から煙が出るくらい、頭をぎちぎちと回転させて議論に喰らいついてゆく興奮を味わわせてくれた近藤譲の『線の音楽』が絶版になったままと云うのは、本当に信じられない。『線の音楽』は、音楽に就いて考えるひとが必ずいちどは読んでおくべき本であり、同様に、日本人が日本語で書き記した、最良の思索の成果のひとつであり、早急に、文庫などで常に手軽に読み得る状態にしておくべき本である。これは、多くのひとが読むべき本であり、バカバカしい古書値で取引される一部の好事家のための本では、決してない。そしてそれは、この『音楽の種子』に関しても同様である。ようやく納得できる値段で購入することができた。