節分。

  • 昼前、まだ蒲団のなかでうつらうつらしていると、玄関が開く音がして、柚子が会社から帰ってくる。すぐに昼になり、きのうのすき焼きの残りに饂飩を入れてふたりで食べる。柚子は風邪薬を呑み、寝巻きに着替えて、蒲団の中に入って眠る。
  • 私は洗濯物を取り込んだりしながら、中野重治の「五勺の酒」を読む。こんなふうに、冒頭からいきなりぶっ飛ばしている。

会えなかったのは残念だがそれでよかったか知れぬとも思う。会えば書かぬことになっただろう。会って話したのでは話が外れて行ったろうと思う。このごろ部分的にモーロクしてそういう傾向が強くなった。久しぶりで会ったときの空気は古い知合いに強くひびく。字でかけば幾分でも外れが防げようと思う。とかく書いただけは独立するというものだ。

  • その後もまるで「村の家」の父・孫蔵のそれのようなテンションの高い語りがずっと続き、大変興奮する。トーマス・ベルンハルトの語りを想起したりしながら、読む。
  • 夜、八時からアルバイト。自転車で行き、帰るが、やはりぴりぴりと寒い。
  • 帰宅して、柚子と並んで、恵方巻きを黙々と食べる。いつもと違うその沈黙ぶりがおかしいのか、「しま」が食卓の下でニャアニャア文句を云うている。
  • 珍しく友達に手紙などを書き、眠る。