- 朝、バスが東京駅に着くがやはり到着が遅れる。隣の席の青年がちょっと変で、もうたぶん十年以上高速バスを利用しているが、いちばん気持ち悪い奴だった。
- そのまま逗子まで出て、海水浴客と一緒に満員のバスに乗って、神奈川県立近代美術館葉山館でブラザーズ・クエイの「ファントム・ミュージアム」展。子供の頃から大好きだった彼らの映画の舞台が眼の前にあることに、とても興奮する。初期の暗鬱でユーモラスな真黒なドローイングも好き。特に、正面に歪んだレンズを取り付けて、函のなかを覗き見るオブジェは、本当に素晴らしい。窃視が、函のなかの人形の瞳やクリトリスから見つめ返されてしまうことによる、ひやっとした快楽は、実際に覗き込んだものでないと、味わうことは難しいだろう。だが展示としては、やはりまったく物足りない。海外で行われた、クエイ兄弟がしっかりとかかわった大規模な展覧会の紹介ではなく、そういう展示をやってほしかった。なるほど近作の映像作品も、ごく短いものはそのまま上映されているが、ほとんどが数分に切りつめられたもので、DVDにも収録されていないものなので、隔靴掻痒。ただし、ブルーノ・シュルツの『砂時計サナトリウム』のためのパイロット・フィルムをみることができたのはとても嬉しかったし、これはとても素晴らしかった。
- 逗子から東京駅へ戻り、東京ステーションギャラリーで、「12 Rooms 12 Artists」展をみる。途中、会場のなかでKJと合流する。ルシアン・フロイドは油彩がまさかの一点のみで些か残念だったが、出品されていたエッチングのほとんどが、とても集中度が高く濃密で満足する。あとはやはりエド・ルーシェイがよかったのと、デイヴィッド・ホックニーの、子供のころから大好きなフォト・コラージュが一点だけだが出ていたのは嬉しかった。サンドロ・キアもちょっと気になったが、しかし展覧会としてはこれもやはり物足りない。アイザック・ジュリアンがすごい作家だというなら《一万の波》そのものをみせてくれ、ということである。KJとあれこれ駄弁って、これからまた仕事の彼と別れ、原宿へ。
- 国立代々木競技場の第二体育館(初めて丹下のマスターピースのなかに入ることができて、それだけで興奮する)で、「IDOL NATION〜CASE OF YOYOGI "16"」をみる。対バンのたこやきレインボーもアップアップガールズ(仮)も、もちろん初めてみる。たこ虹は、こんな感じなのかとみていたが、次のアプガは、とてもよかった。特に黄色のひと(佐保明梨)に、めちゃくちゃ眼を惹かれる。SKEもA面シングル曲ばかりを集めたセットリストで、音が割れようが何だろうが構わず大声を出して歌いまくり踊りまくっていたのがよかった。あかりんの軟体藝(「わたし、これでごはん食べてましたから」)をみることができたのは僥倖。しかし、他のアイドルグループをみていると、SKEは人数が多い分、外でも戦える逸材(私なら荒井優希や井田玲音名の名前が瞬時に浮かぶところ)をまだまだ活用できていないのだなあと、悔しく思った。最後にハケてゆくとき、たぶんあの声はアズマリオンだと思うが、たこ虹とアプガのファンへの感謝の言葉も叫んでいたのが「えらい!」と思った。
- 山本君の家に泊めてもらう。