- 午後から試写で実相寺昭雄の『姑獲鳥の夏』*1を観る。まず、私は実相寺昭雄の仕事は大好きだが、ファナティックな京極堂シリーズのファンではない。
- 俳優が払底している現在の日本映画界の現状を考慮に入れるならば、キャスティングはそれほど悪くないと云えるだろう。私は阿部寛が好きだと云うのもあるが、彼の演る榎木津礼二郎は、あのキャラクタの持っている或る一面を、それなりの雰囲気でちゃんと具体化していた。関口を演った永瀬正敏は確かにサル顔だったし、堤真一の京極堂も健闘と云えるだろう。しかし両手を打ち鳴らしたくなるほどだったのは、内藤に配された松尾スズキ。いやはやもう、個人的にはどんぴしゃり!
- 肝心の映像は、如何にも最近の実相寺なのだが、もっと派手にやってくれたらいいのにと思った。脚本は石堂淑朗が良かった……などと云う無い物ねだりはするまい。盛大に刈り込んだ原作のダイジェスト(久遠寺家の崩壊は原作とは些か異なる*2)だった。二時間の映画だから当然の処置だが、「あら、もう!?」と云ったタイミングで幾つかの事実が開陳されることも。
- 松尾スズキ以外の見どころは、京極堂が飼っている金華の猫。大変ブチャイクで可愛い。また、京極夏彦がたいそうおいしい役*3で出ている。それは、この役を演りたいがために映画化させたのではないかと思わず邪推するほど。
- そのまま続けて試写で、阪本順治の『亡国のイージス』*4を観る。福井晴敏は以前、『終戦のローレライ』上下巻を装丁*5の美しさに釣られて買って読み、中身のつまらなさと長さに、ずいぶん辟易させられたので、良い印象は持っていない。私も愛国心のヘタぐらいは持ち合わせているつもりだが、耳許で「ニッポンチャチャチャ」と喚き散らされるのは大いに気分を害する。だが真田広之や原田芳雄が出ているので観てきた。
- 先に試写で観たF大兄は「謂わば『KT 2』かな」と云っていたが、納得。取りあえず二時間、暴れずに観ることはできた。しかしそれは脚本や演出が際立っているわけではなく、俳優たち、強いて云えば真田広之の存在感が担保となっている。大した役者だ。ちなみに、佐藤浩市はやはり大根だと思うのだが、どうか。
- しかし、英米を敵に回して世界と戦った日本が、60年経つと北朝鮮ごときが最大の敵役かァ……。ずいぶん格が落ちたもんだ。