フランク・ゲーリーと若いベートーヴェン

  • 試写で『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー*1を観る。私が観たシドニー・ポラックの監督作のなかでは、これがいちばん好き。
  • たぶん、フランク・ゲーリーは、世界を信じていない。だから、じぶんが世界に美を作り出さねばならないと思っているかのようだ。
  • ところで、インタヴューイのひとりに、ジュリアン・シュナーベルが出てくるのだが、これがガウンにブランデーにグラスと云う超バブルなスタイルで失笑。
  • 衝動的に買ってしまったグスターヴォ・ドゥダメルベートーヴェンの「運命」と「第七」を聴く。
  • 東洋の島国から出てきた指揮者がウィーンの監督となり、ブリュッセルで欧米人にもできない本物のオペラを聴かせる御時世である。クラシック音楽と云う名の文化産業に次のスターを求めるキャピタリズムの運動が、その素材の輸入先を発展途上国へ、しかもアンチ・アメリカニズムの旗を掲げるベネズエラから求めると云うのは、至極、判りやすい図式である。しかも、そのオーケストラは、貧困層の少年たちを犯罪に手を染めさせないために創設されたものとなれば、先進国の良心的な芸術愛好家の皆さまが手を出さないはずがないではないか。
  • と、冷笑と好奇心のふたつと共に買って聴いてみたのだが、いやはや、これがなかなか素晴らしい。
  • ものすごく若くて活きいきとした、速い音楽。些かの頽廃がない。だから、私の大好きな熟れた官能の響きもないけれど、その代わり、もぎたての果実のみずみずしい鮮烈がある。とても良い演奏だと思う。
  • ドゥダメルは既にオペラも振っていると云う。ぜひ一度聴いてみたいものである。
  • 大澤真幸の『戦後の思想空間』を読了。「資本主義」の捉え方が本質的で面白い。