- 朝は「しま」に起こされる。洗濯物を干して、昼過ぎから出かけてシネ・リーブル神戸でヴィム・ヴェンダースの『アメリカの友人』を見る。舞台がハンブルクやパリだろうとアメリカ映画を、フィルム・ノワールを撮るのだから今回はニューカラー写真の構図と色彩で撮っていいのだという大胆な気概に満ち溢れている。オープニングの滑り込んでくるイエローキャブの車体や窓に映り込んだ光の美しさから、画面の中にもうひとつフレームを作るワーゲンのドアのオレンジの鮮やかさ、そしてWTCが聳えるニューヨークの空の色まで、ロビー・ミューラーのカメラがとてもいい。黒と赤と黄のドイツ国旗の色が頻出するが、それはニューカラー写真のアメリカの方法論だからこそ可能なドイツの表象かもしれない。映画全編に漂う濃厚な躁鬱っぽさとの響き合いもあって、北野武の『ソナチネ』をふと思い出す。ユルゲン・クニーパーの音楽も良かった。満足して、1500円もするパンフと『アメリカの友人』のポスターまで買って、そのまま帰路。
- 『ドイツ人はなぜヒトラーを選んだのか』を読み終えて(レーム粛清は副産物のようなものであり、保守層右派との権力闘争としての「長いナイフの夜」の位置付けに納得。ナチは「さまざまな社会問題に対する有効な答えを持っていなかったため、あらゆることに反対することしかできず、つじつまの合わないものにさえ反対した」とあるが、我が国でもこんな政党が票を伸ばしている)、今はダニエル・リーの『SS将校のアームチェア』を読んでいる。出だしからすごく面白い。