• 「しま」を抱っこして洗面台の縁に乗せて水を飲ませる。こしあんペーストも少しだけ舐めてくれた。私は、柚子が昨夜作ってくれたレンズ豆のスープを食べる。モーツァルト自身が指揮した《魔笛》の初演のオケにも入っていた、当時のオーボエの名手ヨーゼフ・トリーベンゼーが、ハルモニー(CDのブックレットの佐々木節夫の解説によると「オーボエクラリネット、ホルン、ファゴット各2による八重奏」で、「貴族など身分の高い人々が自邸に抱えた楽団」であり、しかし生活のBGMのためではなく「邸内におけるコンサートでの演奏を主な目的としていた」という)にコントラファゴットを加えた九名の奏者のために編曲した《ドン・ジョヴァンニ》を、マルク・ミンコフスキの指揮で聴いている。歌はないけれど、とてものびやかに歌う。そのあとクルレンツィスの指揮で《ドン・ジョヴァンニ》の第二幕を途中まで聴く。
  • 昼過ぎから出かけてシネマ神戸でニナ・メンケスの『マグダレーナ・ヴィラガ』を見る。「死ぬには充分ではないが、殺すには充分な怒り」という台詞がいい。何度も繰り返される、画面の向こうからこちらをじっと睨み据える女の顔のアップで終わるのだが、サウンドはエンドロールの間も続いていて赤ん坊の泣き声がフィルムが終るまでずっと耳を刺す。決して「いい感じ」の映画で終わらせないでおこうとするメンケスの強い意志を感じた。商店街を湊川公園の手前まで歩いて、上崎書店が開いていたので『監督ハワード・ホークス「映画」を語る』を買う。雨になる前に辛うじて帰宅して、洗濯物を取り込む。柚子はずぶ濡れで帰ってきた。