• 書きかけの原稿ばかり増えてぴりぴりしているが、ひとつずつ焦らず進めてゆこう。
  • だらだらと眠って起きる。昨夜は雨が降って慌てて洗濯物を取り込んだが、今朝はすっきりと晴れている。
  • 水を飲みたいと「しま」が洗面台の前にいるが、ジャンプするのが億劫らしく、洗面台の縁まで抱え上げて飲ませる。
  • 「しま」は虎屋の瓶入りのこしあんを二匙ほど、ぺろぺろと舐めとる。洗い物をしたあとだったので私の手が匂ったらしく、掌からは食べなかったが、紙の上に盛ると、猛然と食べた。
  • ウゴルスキの弾く《ディアベリ変奏曲》を聴いている。第11変奏から第12変奏の、ふらりふらりと動き回りながら、ウゴルスキも乗っているのか歌声が入っていたり、第13変奏の、沈黙の中に飛び石のように配置された音だとか第14変奏のあたりを糸口に、ようやくこの演奏が耳に馴染んで、最初から最後まで面白く聴けるようになってきた気がする。
  • 家でだらだら過ごしていると昼で、京都に向かうが、これは15時開演に間に合わないぞと気づく。桂からタクシーに乗って、ぎりぎりにバロックザールの前に着き、飛び込む。昨日の《第3番》のソナタも凄かったが、今日はこちらの耳の緊張も解れており、一本のヴァイオリンからこれだけの音が鳴って、空間をうねりで震わせるのかと驚いた。《第2番》のパルティータは、たったひとりで受難曲を演奏しているような壮絶な音楽になっていた。得難い経験だった。今日はベルクの《ヴァイオリン協奏曲》のCDを持って行ってサイン会にも並んだ。
  • 昨日も今日もほぼずっと眠っている女性がいた。このホールで音楽を聴いている間だけしかぐっすり眠ることのできない人だとしたら、と思うと憐れだが、何て贅沢な時間だろう。
  • シネマ神戸でニナ・メンケスの『ブレインウォッシュ』。実例を見ながらフェミニズム映画批評に入門する映画で、「視覚的快楽と物語映画」のローラ・マルヴィを初めて見た。学生の頃、映画を見まくって、それはとても楽しかったが、あれは男性のまなざしとの同化であり、「主体」になったと思っていたからだろうと語るのは率直で真摯だった。性行為があるだけではなく支配関係があるのであり、だから女性監督でもよっぽど注意していないと「男性のまなざし」を習得してしまう。欲望の力学の解明の点からも、やはりヘーゲルから学ぶべきなのではないか。