或る結婚の風景

  • さて、私は今年、再び冬が巡ってくるころに、柚子と結婚するのである。
  • 私が生意気ざかりの中学生のときから、ずっと親しくさせていただいている女性がいて、彼女はMさんと云う。Mさんは西村しのぶの漫画を愛する女性で、ガキだった私に、梅田のおいしい紅茶の店やミナミの歩き方などを伝授してくれた。まさに、粋でいなせな大人の女性の見本のようなひとだった。結婚されて関西を離れられてから、もう随分経つ。
  • 私が結婚式を挙げることをメールで伝えると、Mさんは彼女が結婚を決めたとき、日記に記したと云う言葉を贈ってくれた。

全く違う人生を歩んできたのに、家族のようにいつも側にいてくれる決心をしてくれた人の気持ちをずっと忘れないようにしましょう。

そして、さらに

それだけで充分です。

  • と云う言葉も、書き添えてくれた。
  • 日記に最初の言葉を記したとき、Mさんは結婚と云う暮らしのとば口に立ったばかりで、その言葉をまだ生きていなかった。でも、彼女は結婚してからの長い時間のなかで、その言葉を実際に生きた。そして、じぶんが最初に書きとめた言葉の確かさを、しっかりと認めたのだろう。だからこそ、Mさんは「それだけで充分です」と云う強い言葉を添えてくれたに違いない。
  • ありがとうございました。