花組の充実と身体論の現在

  • 柚子と宝塚へ。私は五度目の『ファントム』。花組は本当に隅々まで充実している。オサちゃんの今日の歌は敢えてラフに崩していて、それはソロよりも寧ろ桜乃嬢との二重奏で、彼女の歌に寄り添い、重なり、素晴らしく柔らかい効果を生んでいた。二幕の途中でオペラグラスを席の下に落としてしまったのだが場所が判らなくて拾えず、やがて隣の席の女性の足元から「パキョッ!」と云うプラスチックが割れるような音が聞こえて気が気でなかったため、些か集中力が削がれた所為もあろうが、オサちゃんの「少年エリック憑依背中泣き」は前回のほうが良かったと感じる。だが、やっぱり彩吹さんとオサちゃんの父子のやり取りではボロボロに泣いてしまう。
  • 芝居が終わり、椅子の下をそっと覗くと、無傷でオペラグラスが転がっていた。隣の女性のヒールが踏み潰したのは、彼女が幕間で食べていたお寿司の空きパックだった。
  • そのまま柚子と梅田へ出る。堂島のロンドンティールーム*1でお茶してから、M女史と待ち合わせる。彼女の後輩の研究者の方と会い、教育思想学会*2の会合に。柚子は集中して舞台を見過ぎた所為で、疲れて先に帰宅。
  • 武術操身法遊武会*3の主宰である石田泰史氏と、京都の池田醫院*4院長の池田文一氏の、ワークショップ形式によるそれぞれの身体観を巡る発表を聞く。私見によれば、どちらも身体を思索のスタート地点としているのだが、究極的には身体をクリアなものと捉らえる石田氏と、究極的には身体をブラックボックスとして捉らえ、それを積極的に肯定する池田氏の差異が面白かった。現代思想かぶれの私には、池田氏の論は非常にしっくりときた。
  • そのまま飲み会にも付き合い、二次会にも付き合い、やがて三次会(既に電車なし)のカラオケにも付き合い、ゲラゲラと笑って過ごす。私は渡哲也や小沢健二を歌った。明日の日本の学界を担う人びとは、ずいぶん愉快な連中だった。翌朝五時半、梅田で解散。