『シャーロック・ホームズ』をみる。

  • 昼から出かけて、神戸でH監督*1とmzd216さん*2と会食。ミーティングと称して、よしなしごとを、大変愉しく駄弁る。映画とか演劇とか音楽とか、そういうものが、世のなかのどんな抵抗や防壁も突破する力を持っていると、きっと確信しているひとと話すのは、やっぱり愉しくて、私が親しくしてもらっているひとたちは皆そうであるのが、心強い。
  • ふと、H監督が、「きみのブログは高村光太郎なの?」と云われ、一瞬何のことやら判らなかったが、「なんちゅう怖いこと云いはるンですか。ウチの嫁さん、死にますがな!わたし生きていけませんがな!」と返す。しかし、私は柚子より必ず元気で長生きしてみせなければならず、では、そのときまで、この日記を書き続けるとしたら、成るほどこれは『智恵子抄』になるわけか、と、ちょっとひんやりする。
  • mzd216さんデザインの「はちブラ」Tシャツは、次の、そして久しぶりの2tb*3公演でも販売されるらしい。これでようやく買える!
  • 夕方まで延々と話してから別れ、私はそのままぶらぶらと三宮まで古本屋を覗く。
  • 夜、柚子とダイエーの上のジュンク堂で待ち合わせて、ミント神戸で、ガイ・リッチーの『シャーロック・ホームズ』をみる。小学生のときのじぶんを連れてきて、みせてやりたい映画だった。その頃、最上級者向けのシャーロッキアン問題集を完答して、ひとりで悦に入るようなガキだった私は、どうしてもみたくて、『ヤング・シャーロック:ピラミッドの謎』を、父親に頼み込んでピカデリー梅田まで連れて行ってもらった。映画が終わって、父親が「面白かったか?」と訊いて、私はかなり愉しんだのだったが、父の表情は微妙だったので、「ウン、まあまあ」と答えたのを覚えている。その後、父と見に行ったのは、実相寺昭雄の『帝都物語』とデ・パルマの『アンタッチャブル』で、父も私もどちらも面白かったと云い合うことができたのは、後者だった(その後しばらくして、私はひとりで映画館に入り浸るようになり、その最初がベルトルッチの『ラスト・エンペラー』だった)。
  • 『ヤング・シャーロック:ピラミッドの謎』は、決して悪くなかったのだったが、子供心に不満だったのは、それが「あの」シャーロック・ホームズになる前のシャーロック・ホームズを描いているところだった。アニメの『名探偵ホームズ』とNHKで放送されていた露口茂の声が渋いグラナダTV版の『シャーロック・ホームズの冒険』で、ホームズの、つまり世紀末ヨーロッパの世界にずっぷりと嵌まっていった私は、そのふたつのホームズが融合することを、ぼんやりと夢見ていた。しかし、それをガイ・リッチーがやってくれるとは、まるで思ってもみなかった。つまり、この映画は、「あの」シャーロック・ホームズが、スチームパンク切り裂きジャックのロンドンで、ケッタイな機械やら奇怪な黒魔術の集会やらを相手に死闘を繰り広げるのだ。ロバート・ダウニー・Jrは、なるほどジェレミー・ブレッドのような、『ストランド・マガジン』でシドニー・パジェットの描いた挿絵に瓜二つ、と云うような顔ではないが、完璧に狂っていて全く文句なく素晴らしいシャーロック・ホームズだったし、ジュード・ロウの演じるワトスンは男前だし、アイリーン・アドラーはアイリーン・アドラーらしい顔で出てくるし、『ワールド・オブ・ライズ』でのヨルダンの諜報部長が超カッコよかったマーク・ストロングの演じる悪役は吃驚するほどカッコイイし、グラッドストンと名づけられた犬は怖ろしく可愛いし、つまり、全部がぜんぶ、ガキの頃の私が大好きだったものでできている映画だと云うことだ(イイ歳こいてそれを肯定するのか?と問われれば、然り。と)。兎に角、さっさと続きを作って欲しい。
  • 廣瀬純の『シネキャピタル』を読み始める。かなり気持ちのいい本。
  • アラザル』のツイッター係を終える。