東京二期会《サロメ》をみる

  • バスは渋滞で、半時間ほど遅れて東京駅に着く。そのままふらふらとスターバックスへ行き、ココアにするかちょっと悩んで、キャラメルフラペチーノ(エクストラホイップ)とハムとチーズのパンを食べて、仲正昌樹の『アメリ現代思想』を読みながらぼーっとする。
  • 十時過ぎから神保町へ出て古本屋をぶらぶら。三島由紀夫の『春の雪』が舞台化されたとき、中尾彬が本多繁邦を演っていたのを知る。そのまま高田馬場と上野の古本屋でも、百円の棚を主に漁る。
  • 東京文化会館(私はこのホールが、その内と外の空間と意匠、そしてちょうどよい大きさで、とても大好きである)で、ペーター・コンヴィチュニー演出の《サロメ》をみる。私たちの生きる社会の閉塞と、其処からの脱出と云うのでは、同じコンヴィチュニーの演出では《アイーダ》のほうがずっと巧くて感動的だったし、読み込みと云う点でも、やはり東京二期会の上演でみた《エフゲニー・オネーギン》のほうが深くて刺激的だった。ペーター・コンヴィチュニーの仕事としてみるならば、今回の《サロメ》は些か中途半端だったのではないか?
  • 最後には、客席にいた男が、隣席の女性客の制止を振りきり、「あの女を殺せ!」と喚くのだが、やはりオペラ歌手がやっているのだろう、とても立派な発声なのである。しかし、これはそれでは駄目なのではないか?
  • 上野から渋谷まで出て、仕事帰りのM根さんと待ち合わせる。暖かくなった所為で花粉が飛びまくっており、とても辛い一日だったとM根さん。ふたりで渋谷駅で蕎麦を啜ってから、M根さん宅へ。彼の新しい家は、駅からゆるゆると延びる坂を昇りきり、下りが始まって足に入る力が緩んでふっと軽くなった、すぐのところ。これは、「駅から家まで歩いて帰る道」なるものの展開としては、ほぼ理想的なのではないかと感心する。