• 新開地まで出て、シネマ神戸でジャック・リヴェットの『デュエル』と『ノロワ』を見る。『デュエル』はパリのいかがわしいダンスホールを舞台に、いきなり鏡が割れたり異能者たちの超能力バトルみたいになってゆくのは面白かったが、掴み損ねているうちにしばしば眠ってしまう。
  • ノロワ』は冒頭の耳をつんざく波の音と、アルトマンの『ウエディング』の頃のジェラルディン・チャップリンが浜辺で復讐の言葉を英語で誓いながら弟の死体を撫でさする滑らかとは言い難い奇妙な手の動きや、つるんと美しい拡がりの額などに見惚れているうちにあれよあれよと、ベルナデット・ラフォンの演じるゴージャスな女賊との最後の決闘まで辿り着く。黒いドレスの女が小銃をステッキのようにして海に向かって立つショットや、浮桟橋のざぶりざぶりの大揺れを何とか撓めながら掠奪してきた大箱小箱を船から運び出すシークェンスや、蝋人形のような弟の死体や男たちの剣戟や裏切者への罰や『宮本武蔵』のようでもあり『必殺仕事人』のようでもある最後の戦いや、画面に映りながらサウンドトラックを奏でるジャン・コーエン・ソーラルたちなど、何もかもバロックっぽく、あらゆるものが作り物めいているせいで、ダンスは死闘に、死体のふりはすぐに本物の死体に成り代わってしまうし、その逆も然り。とても奇妙で、とても素敵で、たまらなく好きな映画だった。
  • たまたま映画館で出会った資料館のTさんに映画が終わってから「これはすごいですね」と言うと、「お好きだと思いました」と笑顔が返ってきた。