• このところずっと家で溜め込んだ大島渚のDVDを見ているだけだったので、久しぶりに映画に行こうと思うが、もう今何をどこでやっているのかも判らない。あれこれ調べながら洗濯機を回す。風呂に入って、午後から出かけて、シネ・リーブル神戸でケリー・ライカート(初めて)の『ファースト・カウ』を見る。スタンダードのフレームの中に、モノたちが見事に配置されており、サウンドの情報が非常に豊富。死者への手向けの花集めかと思ったらキノコ採集で、あっという間に時代が遡っているのに驚かされてから、椎間板ヘルニアによる足のしびれと、映画館に入る前にちらっとヘッダーだけ読んだ仕事のメールで神経がびりびりしていたにもかかわらず、ほぼダレることもなく、終わりまで見る。むしろ、そのときにはもうすっかり癒されて、落ち着いていたのである。トビー・ジョーンズが出てくると嬉しくなるというだけではないし、この映画には、暴力がないわけでもない。むしろ暴力は瀰漫している。しかし、一瞬の緩みもなく、この映画は最後の穏やかなショットにたどり着くまで、ずっとディーセントなままで、終わる。これは、決して簡単なことではない。
  • 診察時間ぎりぎりで病院に寄り、それから中古レコード屋をぶらぶら回って、電車で神島二郎の『近代日本の精神構造』の続きを読みながら帰る。慌てて洗濯物を干す。