花總が厭味なぐらい強烈な役でなきゃ……

  • 昼から柚子と宝塚に。蓮華嬢とその彼氏と、宝塚歌劇宙組『炎にくちづけを』と『ネオ・ヴォヤージュ』*1を観る。『炎にくちづけを』はヴェルディの『イル・トロヴァトーレ』を翻案したもの。
  • 開幕直後の群集シーンは見応えがあって、木村信司なかなかやる。
  • 初風緑は非常に良い芝居をしている(ギトギトの悪役をこれでもかこれでもかと演じる。非常に強烈な印象を残す。声も良いし)のに、退団なのが残念。この世界、芝居ができても歌が上手でも舞踊に優れていても、「華」と「運」がなければ頂点には登りつめられないのであるよ(と、ヅカ観劇歴の長い柚子が云っていた)。
  • 今回初めてオペラグラスを持参して行ったのだが、和央ようかの顔って写真で見る以上に、さいとうちほの漫画のキャラクタみたいなのね。つるんとしていて、アニメっぽい。花總女王は昔の少女漫画の濃淡はっきりな顔だけど。
  • 単純な人間中心主義の視座からのキリスト教批判は甘ったるくて苦笑ものだったが、ラストの、舞台いっぱいを使ってキリストの磔刑を模した活人画はそれなりに迫力がある。しかし木村氏は特別『イル・トロヴァトーレ』(話の粗筋はグチャグチャ。先日読んだドナルド・キーン氏の『わたしの好きなレコード』*2で、氏はヴェルディの音楽がなければ、あの脚本の舞台に最後まで付き合える人間がいるだろうかと書いておられた)を宝塚の舞台に乗せたかったのではなく、単純に『ジーザス・クライスト・スーパースター』をやりたかっただけなのではないか?
  • そして、最大の見どころは、和央マンリーコと森の奥で結ばれて出てくる花總レオノーラ姫の顔。いやもうそれが、18禁の恍惚表情なのだ(苦笑)。このひとにはだから、もっと強烈な役をやらせなきゃ!!
  • 芝居が終わってから、蓮華嬢に「これ面白いから読んでみてください」と云われ、パンフレットの演出家の言葉を読む。すると「最近やっと判りました。愛は地球を救いません」、「愛はグチャグチャに腐敗した泥沼に浮かぶ小さな一輪の花です」みたいなことが書いてあり、爆笑を通り越して失笑する。おいおい木村チェンチェイ、非道い失恋でも経験したかね? レヴュウは、可もなく不可もなく。
  • 柚子が席を立っている間、蓮華嬢から栗屋西垣の純栗羊羹と抹茶栗羊羹を一本ずつ、「おふたりへの結婚祝いに」と頂戴する。じぶんの鞄の中に、黙ってしまい込む。
  • 蓮華嬢たちと宝塚で分かれ、私は会社に少しの時間、休日出勤。それから三宮で柚子と落ち合い、元町のムジカでお茶を飲んで帰宅する。

*1:http://kageki.hankyu.co.jp/revue/05/03cosmos/index.html

*2:軽い気持ちで読み始めたが、これがとんでもない名著。キーン氏の華麗なるオペラ鑑賞遍歴を、山崎浩太郎氏あたりを聞き役にして、詳細・大部の記録に纏めるべきだと思う。『レコード芸術』で連載してくれ!