『トランスルーセント』を観る

  • U君と待ち合わせて日本橋へ。劇場の前で弟と落ち合い、シアターシンクタンク万化*1の新作『トランスルーセント 彼女とドーナツを』を見物する。原作の漫画は未読。
  • 「万化初の恋愛演劇」と称していて、なるほどキスシーンもあり告白や恋の始まりもあり失われた愛からの再生などもあるが、恋愛ものと云うより、寧ろ恋愛論ものと云うほうがぴったりするのが、やはり美浜源八の作である。
  • 「大人になれば」と歌ったのは小沢健二だが、その喜びと裏腹のかすかな悲しみなどが、例えば部活の楽しみとか面倒臭さを味わうにも、大人になればわざわざ部活ごっこを組織して維持しなければならない、と云うような具体的なシチュエーションで、きちんと描いてひりひりさせるのも、最近の美浜はすっかり自家薬籠中のものとしていて、うまい。
  • 役者陣も健闘で、高橋明文の前に出ない抑えた演技も良かったが、今回、最も目を見張ったのは有元はるかのそれ。万化での彼女の芝居はもうずいぶん長く見てきているが、ひとつステージを突き抜けた感のある、とても素敵な芝居だった。
  • 「その後の『耳をすませば』」とでも呼びたくなるビター&スウィートな芝居だったが、尺が長すぎたのが唯一の瑕瑾。半時間ほど短くできていれば、この舞台の核心部分を成す、島功一の演じる真鍋”電波男”司と、有元はるかの演じる大河内夏香のパートに焦点がさらにぴたっと合って文句なしだったのだが、今回は事情が事情だけに、やむを得ないだろう。
  • ちなみに次回公演は六月末日から『暗号の殺意』(仮題)と云うポリティカル・サスペンスものだとか。期待。