• 朝から雨がざぶざぶ降っている。駅前の横断歩道のすぐ脇の低い街灯の上に濡れたカラスが留まっていて、どこかビルの上にいるらしいカラスと同じメロディで鳴き交わし合っている。シネ・リーブル神戸でタル・ベーラアサイヤスや黒沢清鳥山明岡崎乾二郎などと同じ1955年生れ)の『ヴェルクマイスター・ハーモニー』を見る。あまりにもセンチメンタル過ぎるのではないか!と驚かされもするが、いい映画だった。ランシエールは『平等の方法』の中で、「こんな光、こんな動き、こんな速度で物体や場所がフィルムに収められたことは一度もなかったろうという気持ちにさせられる瞬間もあります」と、映画ならではの喜びを具体的な数本のタイトルを挙げて語るが、やはり、映画というものはそういうものであってほしいと思う。映画館の中で蹲っているうちに、雨は止んでいる。中古レコード屋をぐるっと回って帰る。