漫画を読み、お茶を呑み、悲嘆する。

  • 朝起きて柚子を見送り、そのままぐっすり二度寝してしまい、ゴミ棄てに失敗する。
  • きのうの夜から読み始めたくらもちふさこの『駅から5分』を読み終える。表現の巧みさは云うまでもなく、しかも、これは何と愛らしい!
  • 風呂に入り洗濯機を廻してベランダに洗濯物を干し、本の山の上にあったので手に取った伊図透『ミツバチのキス』をそのまま読み終える。きっかり90分の、よくできた'70年代アクション映画のような漫画だった。面白い漫画を読んだら、柚子の枕の上に置いておくのである。
  • 夕方から三宮に出る。この頃「しま」は私が出かけるとき(と云うのは彼女が独りで家に残されるとき、なのだ)には、それに気づくと何処かに隠れて姿をみせないか、或いは、階段の上のほうでそっと姿勢を低くして、もちろん耳も伏せて、土間に立っている私を、凝っと睨みつけているのだ。
  • ジュンク堂でアルバイトで使うテキストを選んでから、「ムジカ」にゆく。柚子は既に来ていて、お茶を呑み、駄弁る。
  • 夜、帰宅してからメールボックスを開くと、二次面接の結果が来ている。『トウキョウソナタ』でお父さんが、「俺は総てを受け入れる用意があるのに、どうして世の中は俺を受け入れてくれないんだ!?」と激しい憤怒に駆られる場面があるが、まさに今の私の気分をぴったりと表わしている。本音でぶつかってもダメ、軽薄重厚どちらを取り繕ってもダメ、もう何がダメなのか、さっぱり判らない。拒まれている、と云う衝迫に、胸奥がざわざわしてきて、気がつくと、表面にキズのできた風船みたいに、全身から静かに力が抜けて、ぐったりしてしまっている。柚子が蒲団の上でうたた寝しているところへにじり寄っていって、「ダメだった。面接。返事がきてた。メールでね。ウン……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ(溜め息)……」などと報告する。そのまま彼女にへばりついていると、「しま」が私の背中の上を桟橋みたいにして、するっすっするっと歩いて、柚子のほうに飛び移る。その柚子は、私の報告を聞き終えて暫くすると、再び緩やかに眠ってしまった。柚子の寝息を耳元で聴きながら、拒まれている、と云うのは大袈裟な自己憐憫に過ぎない(またひとつの企業が私を拒んだが、世界は私を拒んでいないからだ)。新しい応募先を探してみよう。それまではアルバイトを真面目に務めよう。無駄遣いを減らそう……。等々と考えて、身体を起して、寝室の電燈を消すと、私は部屋に戻ってきて、この日記を書き始める。
  • MR君から携帯にメールがきて、A君がSkypeから呼びかけてくれる。とても、ありがたい。