- ダニエル・リーの『SS将校のアームチェア』を読み終える。このまま映画のエンディングになりそうな幕切れが素晴らしい。
- グリージンガーの遺児たちに対する、歴史家の「わたし」への態度は些か冷たすぎるんじゃないかと思う時がある。しかし、「わたし」は、この本で、グリージンガーという「一人の加害者に人格と主体性をもたせて描くこと」によって、「何千人もの匿名の普通のナチをグリージンガーに代弁させること」をめざしている。歴史家としての「わたし」はグリージンガーというひとりの男の遺児と向き合いながら、同時に、これまで「書き留められることのなかった」「何千人もの匿名の普通のナチ」の遺児たちと向き合っているのだ。だからこそ、「わたし」の態度には歴史家としての厳しさが滲む。