- 昨日は一緒に家を出たが、基本的に柚子は朝、私より少し早く家を出る。自転車をひっぱりだして出かける彼女が、家から出てきたばかりの私に振り返って云った。
- 「てがみ〜」と。
- そして、ペダルを踏んで先に行ってしまった。
- 自転車のハンドルの処に結んであった紙は、やはり柚子の仕業だったようだ。しかし昨晩、雨の降りしきる駅の駐輪場でぱっと見たときは、何も書いていなかったはず。
- 再び開いてみた。すると其処にはボールペンで紙いっぱいに大きく、
おつかれさま
- と書いてあった。字が雨で滲んでいる。仕事が遅くなって終電で帰る私に、柚子が残してくれていたのだ。どうやら私は昨日の晩、紙の裏を見ていたようだ。ちゃんと確認すればよかった。
- 慌てて自転車に乗り、猛スピードで柚子を追いかけた。