• 夜、仕事の帰りにシネマ神戸でカール・テオドア・ドライヤーの『ゲアトルーズ』を見る。疲れていて眠くて少しうとうとする。身体は寝ようとするが眼は見ようとするので齟齬があり、唇を噛んでしまう。これは今まで映画を見ていて初めてのことだった。扉とか鏡とか長椅子とかあらゆる枠を使って、画面の枠の中にもうひとつ枠を作って、その出入りで物語も時間も進んでゆく。閾で倒れたり、頭から外套を纏って、扉を出て廊下を外に向かってまっすぐ進んでゆくだけで、画面が震えるように色づく。または、男たちが「ゲアトルーズ」と彼女の名前を口にするそれぞれの響き。その響きはゲアトルーズを彼らのサイズに切り詰めようとする。扉の外から現れて、扉を閉めて画面から出てゆくゲアトルーズ。強く愛だけが求められるそのさまや外の存在を強烈に印象づけるサウンドの使い方などで、『怒りの日』を思い出させもする。ふとキューブリックが『アイズワイドシャット』でやりたかったのは『ゲアトルーズ』なのかもしれないと思う。
  • 「しま」が全然ごはんを食べていない。柚子と話して、明日は病院に連れてゆくことにする。