望月京の「エテリック・ブルー」三部作を聴く

  • 柚子と一緒に家を出て、私はいずみホールへ「トランスミュージック2008」*1を我らが堂山カンタービレの諸君と聴きに行く。
  • 今回は望月京のエテリック・ブルー三部作(「4D」、「ワイズウォーター」「エテリック・ブループリント」)の演奏に、舞台照明家の岩村源太による光の演出が加わる。第一部はそのふたりと、司会進行の岡田暁生による鼎談。岡田暁生は、その単著は私の書棚に総て並んでいて、刺激的だが、今日もスーツや靴は大変よいものを身につけておられたが、残念ながら司会は巧くない。日頃、馬鹿な学生相手の授業をしておられるためか、現代の現代音楽はお好きでないかのどちらかの所為だろう。
  • 休憩を挟んで、第二部。舞台上は、オペラ上演の折のオケピットぐらいに照明が落とされていて、いつも以上にホールの中の沈黙と緊張はきりりと深くなっている*2所為で、耳が研ぎ澄まされる。
  • 水平と垂直の音楽。ひたひたぞわぞわと横に拡がる音と、しんしんと滴る縦の音。目を閉じるとその暗闇は殆どパノラミックな画面となり、そのそこここで音が花を咲かせる。目を開くと音が見えなくなるような気さえする。まるで、幽霊のような音楽だった。決して人間のための音楽ではないのが、大変よい。水漬く廃墟のための音楽。押井守の『天使のたまご』の劇伴にぴったりだろう。望月京の最も最近のオーケストラ曲「インスラ・オヤ」には、さほど魅力を感じなかったので、些か不安だったが、きょうの演奏会は演奏もレヴェルが高く、充分に満足だった。やはり望月京は好きな作曲家である。
  • 帰りにカンタービレの諸氏とそのまま梅田に出て、屋台で駄弁る。各々、きょうの演奏会への所感が異なるのが面白い。大いに笑う。『アラザル』を御購入いただく。感謝。

*1:http://www.suntory.co.jp/news/2008/10075.html

*2:MR君の後ろの席で話をしているひとがいたそうだ。クラシックや現代音楽の演奏会に行かれる方よ、演奏中は決して喋ってはいけませんヨ!