『アウトレイジ・ビヨンド』をみる

  • 映画館をとても満足して出て駅へ向って歩きながら(雨は止んでいた)、これは、上等な羊羹のような映画だったと思った。潤いがあり、みっちりと均一の滋味が詰め込まれていて、例えばケーキのようにひとつの完結した世界をかたちづくっているのではなくて、始まりも終わりもなく、ただ、決然たる切断だけがそれを成り立たせているところの菓子としての、羊羹。
  • 北野武のフィルモグラフィ上でもとても重要な一本となるであろうし、ずっと組んできている柳島克己の撮影はすさまじいのひと言。前作の『アウトレイジ』は、『みんな〜やってるか!』がビートたけし第一回監督作品であったように、まるでマス北野の第一回監督作品であるかのような、数学の問題をひとつずつ解いてゆくような映画だったが、『ビヨンド』はそうではなくて(むしろ前作のありようは破棄(唾棄)されて)、やはり、総てに抗する「切断」こそがこの映画の原理なのである。これまでみてきた北野映画のなかでも、すごく好きだ。