• そろそろ退勤という頃に空が黒く翳ってきて、夕立というよりはゲリラ豪雨のような大雨。革底の靴が濡れるのも困るのでバスで阪神三宮駅まで出て、九条のシネ・ヌーヴォまで出る。阪神で行くと一本なので、ずいぶん便利だというのに最近気づいた。ジョン・カサヴェテスの『ハズバンズ』の142分版を見る。仕事の終わりに映画館の暗闇に坐り込むと、最近はうつらうらつしてしまうことも少なくないが、全然見ないよりはいいだろうと最近は諦めながら、通っている。
  • 映画が始まってすぐのサウンドの切り出し方に痺れる。ときどき出てくる引きの画面の構図の巧さ。70年代のアメリカの大きな街で写真を撮りたいといつも思う。有害な男らしさを顕微鏡で見つめるように、喉の奥に突っ込んだ指の匂いをわざわざ匂うように、中年の男たち(医者とかデザイナーとか)の不安やら憤怒やら傲慢やら悪意やら勃起不全やら空威張りやら爆笑やらで歪む顔が、画面いっぱいにアップで押し込まれている。