映画

昼前から出かけて神戸映画資料館でフレデリック・ワイズマンの『DV』を見る。慣れた場所から身を引き剥がして逃げて、新しい環境に飛び込むことへの不安に比べたら、どんなに悪い状況にも人は慣れてしまうことと、暴力と支配の連鎖は、その作動のメカニズム…

仕事の帰りにミント神戸でマット・リーヴスの『ザ・バットマン』を見る。これはかなり好き。ずっと雨が降りしきる陰鬱なゴシックのゴッサム・シティの地下に溜まった濁った汚水は、やがて憤怒の洪水となって噴き出す。1995年のデイヴィッド・フィンチャーの…

仕事の帰りにシネ・リーブル神戸でケネス・ブラナーの『ベルファスト』を見る。窓枠に囲まれて配されるジュディ・デンチのばあちゃんの顔の素晴らしさ(最後のアップ、そして隠しつつ見せる縦のストライプのガラス窓)。この映画は、概ねバリケードで封鎖さ…

いよいよ抗いきれず夕方から出かけて、スピルバーグの『ウエスト・サイド・ストーリー』をHAT神戸で見る。極彩色のダンスにさえ付きまとう暴力について。体育館の激しいダンスバトルのシークェンスで、女の足は飛び出しナイフとして用いられている。どのショ…

昼前から神戸映画資料館に籠ってアレクサンダー・クルーゲ特集。TV番組として制作された短篇をセットにした『サーペンタイン・ギャラリー・プログラム』も1974年の『危急の際に中道は死』(同じ1932年生まれの大島渚の1968年あたりの映画と通底するところ多…

ゴミ袋を作りながら戦場になったウクライナのどこかの街の映像がTVのモニタに映っているのを見ている。スピルバーグの『宇宙戦争』と初期アンゲロプロスから甚大な影響を受けたようなルックの映像には、灰色の空を背景にひょろ長く冬枯れている街路樹の下を…

どぶ川の上で写真を撮っているとカメラキャップを落としてしまって、コロコロ、どぼん。すぅーっと流れされていった。 写真を撮っているのは、少なくとも私にとっては、それがスリーコードだけのパンクだからだ。 神戸映画資料館でフレデリック・ワイズマン…

草野なつかの『王国(あるいはその家について)』を「HENRI」の配信でようやく見る。何度も何度もおなじ台詞が、別のショットのフォームで読まれることによって、その差異が聴き分けられるようになってくる。その気持ちよさに浸りながら、やがて見えてくるの…

プルーストを読みながら(『ソドムとゴモラ』で「わたし」がシャルル・スワンからゲルマント大公がドレーフュス派に改宗したことを打ち明けた話を訊くあたり)レベッカ・クリフォードも読んでいる。 ジョセフ・フォン・スタンバーグの『暗黒街』を見る。パン…

同僚たちと三宮のロフト(ではないのだが)の外の階段を降りてゆくと、途中の踊り場のようなところで、ロゴの入った作業服を着た父が煙草を吸いながら笑顔で立っている。眼鏡はかけていない。車をどこかに停めていてどうのこうのという話を父がする。あ、こ…

朝は「しま」に起こされる。洗濯物を干して、昼過ぎから出かけてシネ・リーブル神戸でヴィム・ヴェンダースの『アメリカの友人』を見る。舞台がハンブルクやパリだろうとアメリカ映画を、フィルム・ノワールを撮るのだから今回はニューカラー写真の構図と色…

夜遅く眠ったのでだらだらと起きて、昼前からシネ・リーブル神戸でヴィム・ヴェンダースの『都会のアリス』を見る。映画館で見るのはたぶん初めてだと思う。「写真だったら別の人に頼むわ」と言われる作家に哀れを覚えるが、アメリカだったら写真が撮れまく…

カーショーの『ナチ・ドイツの終焉』を読み終える。見事な一冊。翻訳も良い。終わりを読むと始まりも読みたくなってベンジャミン・カーター・ヘットの『ドイツ人はなぜヒトラーを選んだのか』を読み始める。 駅前で柚子に頼まれた風邪薬とサランラップを買っ…

朝起きると少し熱っぽく36.8度。軽い二日酔いのような頭痛の手前のような違和感が蟀谷のあたりに、膜を張っている。ロキソニンを一錠飲む。暫くすると熱は36.5度まで下がる。平熱。 出かける。少し動くと、ずいぶん汗ばむな、とシャツの袖の湿り具合を見て思…

夜中に森一生の『不知火検校』が始まって、結局最後まで見る。頭の先から尻尾の先までえげつない。しかし森一生は子供(というか子役)を撮るのが本当に楽しいんだろうな。 晩年のTV時代劇まで、ずっと変わらない。

柚子とミント神戸で『クルエラ』を見る。これはタイラー・ダーデンがYA世代向けに書き換えた『プラダを着た悪魔』なんだと思う。あと一本ぐらい撮らないと『101匹わんちゃん大行進』のクルエラにはならない気がするが、これだけエマ・ストーンがかっこよくて…

Twitterというのは、ここ20年でぶっちぎりの悪魔の発明だろう。糞だ。 この書き手は嫌いだなとか信用できないなと思った理由は、ちゃんとある。最近は、私の記憶が薄れてきて、そう思ったきっかけを忘れていることもある。しかし、久しぶりに、何かの拍子に…

原田眞人の『突入せよ!「あさま山荘」事件』をamazonで見る。現場のどたばたを見て笑うが、日本の組織のずるずるな駄目さが露わになって、やがて泣き笑いのような気持ちになってくる。アイリッシュ・フォーク風の音楽でごまかそうとしながらも、この駄目さ…

洗濯物を干す。書き物のメモを作る。 元町の古本屋に行き、全29巻版の『荷風全集』がまだ残っているのを確かめて取り置きする。荷風をまとめて読んでみようと思っている。 梅田のヨドバシまで出て、自室のPCでNetflixをみるためのヘッドフォンを探した。i-Ph…

柚子と昼から出かけて中之島公会堂でマシュー・バーニーの『リヴァー・オブ・ファンダメント』をみる。『クレマスター』の全上映会にも柚子は付き合ってくれたのだった。 未分化の、なにものに変化するかまだ決定されていない粘液を溜め込んだ袋には、開閉の…

朝から近所の歯医者に行く。そのままもうひとつ病院に行こうかと時計をみるが、もうじき閉まるので家に戻る。ぶらぶら歩きながら写真を撮る。いちど帰宅して、パスタを茹でてミートソースで食べる。台所で洗い物をして、洗濯機を廻す。ベランダで洗濯物を干…

百田某の史書もどきを「私たちが批判しているのは歴史修正主義の本だからではなくパクリ本だから」というひとが少なくないが、パクリ以前にやっぱりダメだろう。 仕事始め。帰宅して柚子と晩御飯を食べながら、深作欣二の『日本暴力団 組長』をみる。『仁義…

夜中に借りてきたBDでようやく北野武の『アウトレイジ 最終章』をみる。チンピラひとりを荷台に乗せた軽トラが、坂道を突堤のほうに滑ってゆくオープニングがほんとうに、めちゃくちゃ素晴らしい。映画が始まるより先に、もう既に始まってしまっているという…

朝起きてゴミを棄てる。 今日は「しま」がちょっと距離をおいて、ずっと近くにいる。私が別の部屋に行くと、いつの間にか同じ部屋のなかにいる。私にべたべた触られないようにしているけれど。 出かけようかと思っていたけれど、やっぱりやめにして、借りて…

実家の近くの散髪屋に行って髪を切る。地主に土地を返すときには更地にせねばならず、家をぶっ壊すのも数百万かかるというような話を聞く。堂島のジュンク堂から梅田のタワレコをぶらぶら覗いて、しかし何も買わずに帰る。柚子が買ってきてくれたピザを食べ…

昼前に起きてきて、借りてきたDVDで、ケン・ローチの『わたしは、ダニエル・ブレイク』をみる。 この映画は、真黒なショットから始まる。黒い画面の上にはスタッフの名前が出てきて、その間ずっと、会話している声だけが聴こえる。映画が進むにつれて、シー…

昼前に起きてきて、借りてきたDVDから城定秀夫の『悦楽交差点』をみる。七〇分のエロ映画というフォーマットのなかに、どうやったらそれ以上のものを持ち込めるかということを城定の映画は常に模索していて、それはいつも分割によって齎される。先日今池でみ…

一年のうち三ヶ月も四ヶ月も書かないものが日記であると云えるのかどうか知らないが、また書いてみたい。 仕事を終えて久しぶりに貸ヴィデオ屋に寄ってから、帰宅してスパゲティを茹でて食べたあと、たまたまTVをつけたら時代劇専門チャンネルで深作欣二の『…

朝から雨と風がすごい。ポテトチップをふた袋食べて気持ちが悪くなる。借りてきたDVDで、森達也の『fake』をみる。佐村河内守さんの家ではうちとおなじ皿を使っていて笑う。やっかいな夫がひとりりいて、妻と猫が一匹というのは、ふと思うとうちと同じだった…

朝から『脱獄広島殺人囚』をみる。松方弘樹への追悼。やっぱり変な映画だった。大谷直子の演じる妹の家の裏で、許可のない屠畜を三国人の三人組がやっているのを藪のなかから眺めたあたりから、松方の演技のトーンが、映画のスタンスが変る。まるで懲役の数…